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生産者 ル・トン・デ・スリーズ

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「儚い恋の歌に平和への想いをのせて」

「ル トン デ スリーズ(さくらんぼの実る頃)」は、1866年にジャン=バティスト クレマンによって作詞され、アントワーヌ ルナールの手によって作曲されたフランスの古い歌曲です。この曲は後に、パリ コミューンをめぐる歴史に強く関連付けられ、作詞家のジャン=バティスト クレマンが想いを寄せていた女性が、「血の一週間」の間に殺害され、彼女を失った悲しさと儚い恋の想いを綴ったものと言われています。このパリ コミューンは、ドイツ プロイセン王国との戦争に敗れたフランスの政府とパリ市民の和平交渉をめぐる対立から生まれたパリ市民による革命自治体でした。その対立は、フランス(ヴェルサイユ)臨時政府とパリ コミューンの内戦とつながり、パリ全土が戦火に焼かれることになります。この戦闘は後に「血の一週間」と呼ばれ、政府軍は、パリ コミューンの兵士や市民を裁判などを経ずに銃殺するなどして3万人にも及ぶパリ市民を殺害し、パリを鎮圧しました。
そんな悲劇から生まれた歌曲から自らのドメーヌ名をとったのは東ドイツ出身のアクセル プリュファー。経済大学に2年ほど通っていましたが、自分の望む本来の生き方とは違うのではないかと疑問を抱くようになり、バーなどで働きはじめます。その後、兵役に就くのを嫌ってキャンピングカーに乗り込み、安住の地を求めて放浪します。そして行き着いたのがフランス ラングドック地方。この地で彼は、ヤン ロエル、ジャン=フランソワ ニック、エリック ピュフェリン(ラングロール)と出会い、彼らからワイン造りの手法とそれにかける情熱を学び、自らもヴィニュロン(ブドウ・ワイン生産者)となりました。
かつてプロイセン王国が存在した東ドイツから兵役を避けてフランスに渡ってきたアクセル プリュファーが、自らのドメーヌの名前にドイツ(プロイセン)とフランスの戦争をきっかけとした悲劇から生まれた歌曲「ル トン デ スリーズ」を選んだ背景に想いを馳せると、彼の大切にしたい生き様というのが垣間見られるような気がします。彼がいた当時のドイツには徴兵制度があり、18歳以上の男子には兵役の義務がありました。とはいえ第二次世界大戦の歴史的経緯もあり、良心的兵役拒否(ボランティア等の従事による兵役の代替)が認められており、兵役自体が不可避というわけではありませんでした。しかし、平和を愛する彼にとって、戦争というシステムに加担するような事はしたくないという想いからでしょう、生まれ育った母国を離れることを選択します。そして移り住んだフランスでワイン生産者となり、母国ドイツと自分を受け入れてくれたフランスとのかつての戦争の歴史から生まれた歌曲からドメーヌ名をとったのです。それは、彼の平和への強い想いのあらわれであったように思えてなりません。
そんな心優しいアクセル プリュファーに実際に会ってみると、その柔らかい人柄とゆったりとした物腰に驚かされます。実際、彼のほんわかしたキャラクターは、近隣の自然派ワインの造り手たちからもとても愛されており、まだ自身の醸造所を持っていなかった2003年にはフラール ルージュのジャン=フランソワ ニックが醸造所の一部を貸してくれたり、剪定作業が遅れていた時にはル カゾ デ マイヨールのアラン カステックスやヨヨ、ドメーヌ スカラベのイザベル フレールらが手伝いに来てくれたりしたこともあります。また映画や音楽が大好きで、彼が手がけるワインの名前は、様々な映画や音楽の一節から引用されていたりもします。
ル トン ド スリーズのワインを産する畑は、南フランス ラングドック地方のベダリューという街からすこし山を登った森の中にあります。ラングドック地方といえば、果実味の凝縮した力強いタイプのワインが一般的に造られるエリアですが、ル トン ド スリーズの畑の多くは標高の高い山間にあり、比較的涼しい気候と乾燥した風によってみずみずしさと清涼感のある味わいを備えたワインとなります。畑でのブドウ栽培においては、除草剤や殺虫剤、化学肥料を用いない自然な栽培を行い、醸造に関しては自然酵母による発酵にはじまり人為的な介入を避けたシンプルな方法で醸造を行っています。そのシンプルな手法で造られた彼のワインを口にすると、淡く優しい果実味とスムーズな飲み心地があり、「これは本当に南フランスのワインなのだろうか」と思えるほどチャーミングな魅力に溢れています。アクセル プリュファー自身の素朴でほがらかな人柄がピュアにあらわれた、癒しを感じさせてくれるワインとなっています。

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